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はじめまして、井手隆久と申します。
今月「カリメロ」の3度目のリメイクが放映されるということで、検索したらこちらにたどり着きました。
こんなに熱く「カリメロ」を語っておられる方々がいらっしゃるのに驚きました。
特に1974年版に愛着をお持ちなようで、そこにも驚きました。
実は私は1974年版「カリメロ」の脚本を書いていた者です。
関係者の一人として、皆様のご愛顧にお礼を申し上げつつ、当時の状況を少し語れればと思い書き込む次第です。
ご存知のように「カリメロ」はイタリアの漫画で、イタリアでは誰もが知っている人気キャラクターということで日本に紹介されました。
しかし、イタリア版アニメ「カリメロ」は一話が3分程度のショートムービーで、そのスタイルは日本ではうけないだろと思えました。
そこで、若干の「日本ナイズ」をせねばなりませんでした。
最初にそのことにあたったのは、今では巨匠脚本家となられた山田太一氏でした。
山田太一氏は原作を換骨奪胎し、カリメロという幼い子供が荒野をさすらい、様々な人に出会って成長して行くという物語を構想しました。毎週30分の放送ですが、例えば「世界名作劇場」のような感じで長いお話を提供出来ないかと考えたわけです。
しかし、その構想はイタリアの原作者との交渉がうまくいかず、頓挫しました。もし実っていれば現在我々が思い出にしている「カリメロ」とは違うものが出来ていたかも知れません。
1974年版「カリメロ」は日本放映と同時にイタリアでも放映されることがすでに決まっていましたので、日本側の思惑だけで進めるわけには行かず、必ずイタリアの原作者との交渉をしてからでないと脚本を書くことは出来ませんでした。
山田さんは監修という立場になられ、私を含めた3人が1クール全部を手分けして書くということになりました。とにかく時間がありませんでした。
各自が思いついたストーリーをイタリアに送り、原作者とのご合意が得られた分から書き進めました。
掲示板に「プリシラの家は何処にある?」という疑問が出されていましたが、設定の細かな部分で一貫性がないというのはそういう事情で、大雑把な設定の確認のみで、みんな一斉に書き初めていたためそういうことが起きました。
アニメは東映動画が担いましたが、彩色の部分を外国に下請けに出したので、要請した通りの彩色にならなかったりして、直しが何度も必要で、進行は混乱しました。
当時外国に下請けに出すなどということは先駆的なことでしたが、運の悪いことに、その国と政治的なトラブルが発生し、国交断絶も起きかねない状況が発生しました。
進行が遅れるどころか、セル画が戻って来ないかも知れないという試練を「カリメロ」はくぐらねばならなくなったのです。
まあ、日本の首相があまり強硬な手段をとらなかったので、国交断絶にはならず、セル画は戻り、なんとかオンエアにこぎつけ我々はホッとしました。
「カリメロ」はとても好評で、確実に視聴率は上がり続け、下がることは一度もありませんでした。そして当時としては珍しく、男の子にも女の子にも人気があり、すぐに2クール目の放送が決定しました。
2クール目に入った時、火曜日の放送というのは変わらなかったのですが、放送時間の変更があったと思います。30分ほどずれました。
この時異変が起きます。
順風満帆、右肩上がりの視聴率で来た「カリメロ」ですが、2クール目で裏番組に強力なアニメが登場します。
その為、視聴率はガクンと落ちます。
それほど裏番組は強力でした。
裏番組は、実は再放送で、レギュラー放送は日曜日の夕方でしたが、あまりの人気故に火曜日も再放送をしようという編成が当時組まれたのでした。
「カリメロ」は幼いお子様には圧倒的人気があったのですが、結局視聴率的には報われず、3クール目は作られませんでした。
日曜日の夕方に放送されている高視聴率アニメといえば、もうお分かりだと思いますが、現在も放送中の「サザエさん」です。
さすがは「サザエさん」、再放送でも大変な視聴率をはじき出し「カリメロ」は吹っ飛ばされたわけです。
「サザエさん」に負けない番組として育て上げられなかったスタッフの一人としては残念な気持ちです。
1974年版は短い放送期間でしたが、こんなに思い出を持った方々がおられて、嬉しい限りです。
ちなみに、私が書いたお話は下記タイトルです。
「遅刻戦争」
「呪われたママ」
「インチキ大地震」
「ジャ、ジャ、ジャンチャ」
「大スター、カリメロ」
「ちょっと残念」
「幻の百点」
「ゆうかい魔現わる」
「ペンダント騒動」
「パパごめんね」
「しんせつな一日」
「世にも不思議な出来事」
「ボビのハンバーガー」
「肩こりこりこり」
「さよならプリシラ」
「刑事カリメロ」
「ピーターの謎」
不出来な作品群ですが、ひとつでも思い出に残っておられれば嬉しく思います。
「呪われたママ」はトラウマが残りそうな作品とどなたかおっしゃっておられましたが、幼いお子様には申し訳なく思っております。
でも、若かった私はああいうものを書きたくて仕方なかったのです。
「ママはどうして僕のことを愛しているんだろう?」(呪われたママ)
「パパとママが離婚したら僕はどうなるのだろう?」(ちょっと残念)
「僕には秘密がない。どうしたら作れるの?」(ジャ、ジャ、ジャンチャ)
「肩こりのひどいママ。でも、幼い僕には肩こりを治せる力がない」(肩こりこりこり)
といったような具合で、当時としては子供向きのアニメでそんなこと書いていいのかと危惧された内容でしたが、プロデューサーや監修の山田太一さんが守ってくれました。
3回目のリメイクが放送されるということで、久しぶりに当時のことを思い出しました。
そして今も熱く語っておられる皆様のことを知り、嬉しく思いました。
(尚、作品名とライター名が一致しないとの苦情があったと掲示板にありましたが、その通りです。Wikipediaの情報が相当にいい加減なので仕方ないと思います。)
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